南海トラフ地震防災対策推進地域の指定(内閣府)
学生コラム

災害から要援護者を守る

東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島での死亡者数は日本全人口の1.03%にのぼりました。また、障がい者の死亡者数は、障がい者の全人口の2.06%にあたり、その数は健常者の2倍となっています。

そして、震災の死因の9割が水死であることから、津波から逃げ遅れる状況が多く起きていたことが考えられます。被災したほとんどの自治体で障がい者の死亡率の方が高く、要援護者の所在や特徴といった個人情報の把握と共有が求められています。

要援護者とは1人で非難することが難しい住民を指しており、高齢者、知的・身体・精神障がい者、難病患者などが該当します。

要援護者に対して適切な支援をするためにはリストを作成する必要がありますが、個人情報の取り扱いについては本人の同意が必要であり、同意なしでは扱う事が難しいです。

さらに、要援護者の個人情報は、悪徳業者に利用される例もあり、認知症の高齢者が次々に物を買わされるケースも発生しています。そのため、要援護者の個人情報の管理を徹底し、使用目的を明確に伝えることが必要になります。

また、援護者である民生委員の高齢化や、複数の要援護者の見守りを掛け持っていることから、緊急時の要援護者支援が難しい状況です。

30年以内に南海トラフ地震が起きる確率は7割近くに達しており、これから先、大震災が自分の身に降りかかることを想定していかなければなりません。

また、自分の身を守ることに精一杯な状況で、要援護者の避難を支援することが出来るのかを考えたとき、自分自身のリスクの問題が出てきます。事前の要援護者の把握に加えて、支援の協力に参加する人が増えるほど、支援する側の一人当たりのリスクは減少すると思います。

東日本大震災から3年以上が経ち、メディアが震災を取り上げる回数も減少していますが、被害の状況を見直し、浮き彫りになった問題を自分たちの地域に当てはめて考え、必ず起こる震災に備えることが求められているのではないでしょうか。

参考文献

(1)神山 智美:『災害時要援護者支援制度における情報収集・情報共有と「個人情報保護」に関する検討 :「個人情報保護条例」上の論点を中心に (セッション1,分科会,2012年(第117回)学術大会)』 九州法学会会報 2012, pp.1-5, 2013.
(2)端谷 毅:『震災と災害時要援護者支援』 日本赤十字豊田看護大学紀要, 7巻, 1号,pp.59-63, 2012.

アイキャッチ画像は、「内閣府防災ページの南海トラフ地震に係る地域指定の資料」を引用。